我が家では「棚橋はもう仏の域だよな」というのが定説で。
これほど老若男女全方位的に「愛」を振りまいたレスラーは今までいないんじゃなくて?
そりゃアイドルにも似た立ち位置であるが所以に「愛して(注目して)くれ」というレスラーはいたと思うけれど、注ぐレスラーってどうじゃろう。棚橋はもう何年も「愛してまーす」と叫び続け、会場中四隅の手の届く限りのファンに愛を注ぐ。
そこには「疲れない」というセリフを吐きつつ、優等生キャラになろう、的な嫌らしさが皆無で。ので「もうアレって仏の域だよな」と思ってしまう棚橋弘至なんですが。
しかし、その棚橋弘至を使って映画を撮るという話が出た時「か、滑舌大丈夫か」というのがファンの間でもっぱらの話題。ご本人もTwitterだったかで「大丈夫か」とおっしゃってたような気がする。
でもね!その認識は甘かったよ!やっぱりすごかったよ棚橋は!
滑舌よりもアナタ!もうスクリーンの中の棚橋に、いやさ大村孝志に注目しろってんだコンチクショウ。
実に!実にスクリーンでキラキラときらめいているですわタナが!なんつーかスターとしてキラキラ、でなく、とーちゃんとしてキラリ。「パパなんて!」と嫌われてしょげてもキラリ。
プロレスのシーンだけでなく日常の動作でも人間的魅力溢れてて。
カメラマンもよくぞ撮ってくださったと思う。
もうさ、出だしのね、なんてことない授業参観に向かって必死で父親として普通に走ってくる棚橋を見て「あ、大丈夫だこれ」と思ったんですよわたくし。でもってネクタイをうまく結べなくて「ああっ」って呻くのってそれ棚橋だよ棚橋。
しかもそのシーンでねサラリと棚橋の膝を!あのボロッボロの膝を見せる演出のニクさよ!
冒頭で、このボロボロの膝を見せるのと見せないとでは、映画の出来は絶対に違ってたと思う。
いやね。
正直なところ「プロレスシーンを映画館で見る」ってなノリで行ったんですよ、わたくし。したらば「なんでここで泣いてんだ?」ってぐらいほぼ全編で泣いてたわ。
いやーもう実によく出来た脚本で、もうね、演出の緩急が素晴らしくてねー!
もちろんレスラーだけでなく今をときめく役者さんをこれだけ揃えて中途半端な脚本てのも役者さんに失礼にあたるんでしょうが、でもさーこういう業界モノってファンからすると「そこ違うからー」てアラが見えるとサーっと醒めてしまいがちじゃないですか。
なのに、登場シーンやエピソード、試合運びそして結末に至るまでの展開にプヲタとして「そりゃねーだろー」とツッコミをいれるスキがない。
子供向けを兼ねているってこともあるからか、ヒールを「わるもの」というとこには引っ掛かるけど、そこは仕方ない。
でも、子供の目線から見た、北村や岡ちゃん、真壁や血みどろの天山からはじまり、オカダ演じるスターレスラードラゴンジョージと寺田君の出会いとか、内藤ヒロムのちらっと登場とかも挟みつつ、そして終わりに向けて二転三転するドキドキのストーリー。
本当にプロレスを理解してそしてリスペクトして作らないとこういう展開にはならないでしょうね!というほどにウマイ。そこを演技力で固めるプロの役者陣がもうありがとうございますみなさまさま。
全編アドリブだという野上アナの実況もプロレス以外の観客を意識しているのかものっすごく丁寧で、絵面としても普段広角全ピンで見ているプロレスが映画ならではの被写界深度浅めなのが新鮮でそれがまた情緒的で、泣ける。
劇中の「お前はエースとして終わってんだよ」と棚橋に厳しく言い放つ田口のセリフを聞きつつ、あの膝でエース張ってんだよなあとそっちのにぐっと来たワタクシ。ので、今年のG1の棚橋。
G1の頃ってちょうど映画公開一ヶ月前で。実はまだ棚橋は不安を抱えてたんだろうなと思ったらさらに胸熱、瞼も熱い。
ま、不満といえば「なんでタナお膝元の二子玉川でやらんのじゃー!」と映画を観に行くためだけに自由が丘を7時に出発して桜木町までの移動をするハメに。しかもそのあと昼までに二子玉川へ逆走というなんのためにみなとみらいまで行ったんでしょうねという。野毛で洋食食べたかったわ、みなとみらいでスナップの一枚も撮りたかったわ天気だったし。
それはさておき。
すっごい大ヒットでなくても、たぶんすごく息の長い映画になるんじゃないかと思う。そんな作品でございましたのことよ。
どうでもいいけど最後の方のお好み屋さんのアレ、さらっと邪道さんぽかったけどクレジットになかったので単なるファンコスプレ?画角的にむりやりはいってる感ですごく気になったのですが。あと尾崎さんがリングもまだ設営なさってるって、ということは運転も???